おはようございます。広報のhiroです。
昨年5月に滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール(大津市)で開催された「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭2018」で、当社グループのルームチューニング材が活用されました。日本音響エンジニアリングが開発する柱状拡散体Acoustic Grove System(AGS)です。
前回は、メインロビーでの公演に使われたAGSとその効果についてお届けしましたが、今回は同音楽祭の目玉公演である「野外オペラ」をレポートします!
湖畔に響くアリア。幻想的な「かがり火オペラ」
野外オペラ公演「かがり火オペラ」は、びわ湖ホールに隣接する広場(湖畔広場)につくった特設会場で上演されました。
びわ湖ホールは、西日本初の4面舞台を備えた本格的なオペラハウスです。オペラの殿堂といえる同館が手がける初の野外オペラは、大きな注目を集めていました。
演目は、ヘンリー・パーセル作曲の歌劇『ディドとエネアス』。
出演は、びわ湖ホール声楽アンサンブル。
演奏は、ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団。
指揮は大川修司氏、演出は中村敬一氏です。
この日のために作られた「かがり火舞台」。
びわ湖ホール声楽アンサンブルによって、初の野外オペラが幕を開けます。
▼ 暮れ残った空のもと「かがり火オペラ」が始まりました。(序曲)
▼ 第2幕第1場 魔法使いの洞窟のシーン
▼ 歌手の演技・歌唱は、ステージの下手(しもて)~中央で披露されました。
▼第3幕第2場 宮殿の中のシーン
▼ステージに設置されたAGSは、見た目にもキレイで舞台美術のようでした。
客席は282席。音としては出演者(歌手)の歌唱、オーケストラのアンサンブルのほか効果音がありました。
音響にはPAが用いられていましたが、音の拡がりと響き、広いダイナミックレンジによる自然な音色は、スピーカー・システムの存在を強く意識させることなく、オペラ公演の生音の質感と魅力を観客へ届けていました。
「音」というものは、自然であればあるほど、心地よければ良いほど、また世界観にマッチしていればいるほどに、その存在が意識されないモノだなと常々感じます。今回の公演もそうで、観客が歌劇の世界観に熱中できたのは、裏返せば音響デザインがもの凄いということだと思うのです。
日頃、当社の現場や製品においても「自然でクリアで快適な音環境を実現しているこの状態って、実は結構すんごい技術なのです!」と力説したくなる場面があるのですが、この素晴らしい野外オペラを見ながら、そんな日々の一コマを思い出したのでした。
二日間の公演は、両日とも大盛況。
天候にも恵まれ、観客は優美な世界を堪能しました。
湖畔に響く美しいアリア、ドラマティックな音楽、舞台両側に灯るかがり火、照明といった舞台の要素に加え、夕暮れから夜へと変わる空、湖面に吹く風、琵琶湖の湖畔というロケーションまでもが合わさり、古代ギリシャ劇を彷彿とさせる、ここでしか観られない幻想的な世界が作られていました。
柱状拡散体「AGS」の採用理由と効果について!
AGSは「部屋」の音響特性を調整・改善できる木製の機構。
今回の「野外ステージ」に、なぜルームチューニング材が採用されたのか?効果のほどは?
関係者様にうかがったお話を交えて紹介します!
びわ湖ホール初の野外オペラ開催をご発案されたのは、芸術監督である沼尻竜典氏ですが、同館の皆様にとって長年の夢の企画だったと耳にし、かがり火オペラの音響デザイン・プランナー押谷征仁氏(公益財団法人びわ湖芸術文化財団 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 舞台技術部部長代理)に、野外オペラへの思いをお聞きしました!
押谷氏「琵琶湖畔のロケーションに建つびわ湖ホールですから、シドニーのオペラハウスに引けをとらないような観光地にしていきたいと思っていますし、オーストリアのブレゲンツ音楽祭のような湖畔オペラは、琵琶湖だからこそ実現できるのではとの期待もあります。その第一歩となる野外オペラを開催できたことは感無量です。」
押谷さんの言葉から熱いお気持ちを感じるとともに、湖畔あるいは湖上など『未来のびわ湖ホール野外オペラ』が秘める可能性を想像し、ワクワクしました。
さらに、今回、ルームチューニング材AGSを採用した理由については
「音の反射の良さと、森の音場というAGSのコンセプトは、野外で最適と思ったからです。」(押谷氏)
と話してくださいました。
実は、AGSを野外で使うことはメーカーの日本音響エンジニアリングとしても初の試みでした。しかしながら「AGSはスタジオに多く見られるデッドな面に置くことで、空間に音を拡散させながら返してあげるという使い方もできます。今回もきっと上手く効果を発揮してくれると考えていました。」と日本音響エンジニアリング担当者は言います。
この「AGS設置」に関するお話の前提として、立地に目を向けてみます。
特設ステージは、びわ湖ホールの裏に位置する湖畔広場に作られました。
ステージの後方は、建物の大きなガラス面。逆に前方は湖で、とにかく開けた環境です。
琵琶湖の大パノラマが広がる光景は、景色としては最高!!!
しかしながら、背後のガラス面は不自然な音の反射が懸念されますし、その他の方向は音の反射がほとんどない超デッドな環境(野外ですものね)。生楽器の演奏環境としては、厳しい条件と言わざるを得ません。
そこで活躍した音響機材の一つがAGSでした。
▼ 湖畔広場の特設ステージ
▼ 音響対策の一つとして設置されたフラットタイプのAGS「ANKH-Ⅰ」
▼ ANKH-Ⅰは、オーケストラが演奏する上手側に3台、歌手が演技をする下手側に2台設置された。
立地的な音響条件としては、アコースティックらしい自然な音が損なわれてしまう可能性があったわけですが、AGSを設置したことで一種の仮想空間が作られ、マイクに入る音を自然にし、過剰なイコライジングを必要としない音響オペレートを可能にしたと考えられます。
AGSは「非演奏空間」を「演奏空間」に変える目的で活用できると改めて実証していただけた、そんな現場でございました!
押谷様をはじめ滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールの皆様、ご関係の皆様、本当にありがとうございました。
だれもが気軽に一流の音楽に触れられる音楽祭のすばらしさ!
かがり火オペラの素晴らしさもさることながら、今回の音楽祭で強く感じたのは「だれもが気軽に優れた音楽に触れられる音楽の祭典」というコンセプトの素敵さでした。
例えばオープニングコンサートの「京都市交響楽団/沼尻竜典(指揮)/中村恵理(ソプラノ)」は、同音楽祭のテーマであるオペラ「ロミオとジュリエット」から「私は夢に生きたい」等が歌われました。
なんと、この世界レベルの歌唱をS席2,000円で観賞できるのだから驚きです。この他、0歳児の赤ちゃんと一緒に楽しめる公演や無料公演も豊富。だれもが気軽に一流の音楽に触れられることを企図したプログラムに感激を覚えました。
野外オペラを目的におとずれた音楽祭でしたが魅力的な公演が目白押しで、つい心が躍りまして・・・いそいそと当日券を購入し、しっかり堪能させていただいたのでした。もう本当に素晴らしかったです!
近江の春 びわ湖クラシック音楽祭には、ここでしか味わえない感動の体験がありました。
本年の音楽祭は4月27日(土)、28日(日)に開催されます。今から楽しみです!みなさまもぜひご注目ください。
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