驚異の「黒」がコンサートの映像演出を変える

こんにちは。経営企画の櫻井です。

コンサート現場で活躍する新開発LEDディスプレイ・システム『VB9』の特長は“暗転時にスクリーンの存在が完全に消える「黒」”だと先日のブログでお伝えしました。今日は、そのお話の続きを書きたいと思います。


なぜ、この「黒」がステージ演出で重要視されるようになったのでしょう?


『VB9』開発プロジェクト ヒビノクロマテック Div. 石原サブリーダーに、コンサート映像についていろいろ教えてもらいました。


「スクリーンの『黒』にこだわる理由としては、演出上の要素が大きいと思います。

何もないところから、突然映像が現れてショーが始まる。

その瞬間、会場は驚きとともに大歓声に包まれます。

もし、暗転したところに巨大なスクリーンがボヤ~っと浮かんでいて、『何かそこから現れるんじゃないかな』と予想できてしまったら……ちょっと興ざめですよね。」


「黒」の最大の目的は、スクリーンがあることをオーディエンスに意識させないよう、その存在を完全に消すことなんです。


ステージ上の主役はもちろんアーティストですから、“黒子はやはり黒くないといけない”というわけです。


今回は、ステージ内消灯時の周辺のわずかな漏れ明かりに対して、画面表面がいかに外光を拡散・吸収するか、という問題を解決するために連日連夜、開発にあたったのだそうです。


普段コンサートを観ているときは、そんなこと考えたこともないわたし。

これほど微細なところまで考慮しながら開発が行われていることにただただ驚きでした。


さて

ヒビノが本格的に映像事業を開始したのは1984年(昭和59年)のこと。

その翌年、日比谷公会堂・大音楽堂(野音)で行われた「ARB」のコンサートで初めてマルチビジョン(またはマルチモニター)と呼ばれるブラウン管をタテ・ヨコに何台も積み上げてつくる大型映像を持ち込ませていただきました。

ARBコンサート 1985年4月 日比谷公会堂・大音楽堂(野音)


しかしその当時、コンサートに大型映像を取り入れるという発想はほとんどなかった時代。


当初の映像機材は、大きくて重たくて設置や運営が困難。

使い勝手が悪くて、なかなかコンサートで受け入れてもらえませんでした。

それに、コンサートにとって“音響”は欠かせない存在でしたが、「映像に費やす予算なんてないよ!」と断られることもしばしば……。

アーティストやコンサート主催者の人たちに映像の必要性を感じてもらえるようになったのは、それから数年経った後のことでした。


技術の進歩によりLEDディスプレイ・システムが本格的に運用されるようになった1990年代には、サービスモニターとして多くのコンサートで大型映像を採用してもらえるようになりました。

サービスモニターとは、客席からステージが見えづらいオーディエンスのために、ステージの背後や左右に大きなスクリーンを設置してアーティストの表情やパフォーマンスを映し出すものです。


過去には、スクリーンが巨大化するにつれ、照明や音響など他の演出との調整が困難になることも多々あったのだとか。

そんな事情もあって、LEDディスプレイ・システムは軽量化・薄型化が進みました。


近年、ステージに占めるスクリーンの存在感は増しています。

どんどんステージのなかに組み込まれるようになり、今では完全に演出機構の一部としてそこにあるのが当たり前になりました。

また、コンサート映像はサービスモニターの域を超え、その用途も幅広くなったように思います。


“大型映像を用いて、アーティストが描く音楽の世界を創り出しオーディエンスをその世界のなかに引き込む”


こうした演出色の強い大型映像の需要が高まっています。

ディスプレイ同士を組み合わせたり、ステージセットとコンビネーションさせたりして立体的な映像空間を創り出すなど、その技巧も凝っています。


サービスモニターだけがコンサート映像の目的なら、「黒」にとことんこだわる必要はなかったと思います。


この先、コンサート映像はどのような進化を遂げるのでしょうか?

新たな映像演出の可能性を感じつつ、これからも楽しみに見守っていきたいです。