ライブレコーディングの現場レポート!及川光博様ワンマンショーツアー2012「銀河伝説」(その3)

おはようございます!広報のhiroです。

以前の投稿(ライブレコーディングの現場レポート!その1その2)に続き、2012年6月2日に開催されたコンサート、及川光博様のワンマンショーツアー2012「銀河伝説」 @NHKホールで行ったライブレコーディングの様子を、ご紹介したいと思います。


今回は、ヒビノの録音中継車「オデッセイ(ODYSSEY)」から少し離れまして、ライブ会場内にセッティングされている収音機器、マイクロホンをお見せしますね。


ライブレコーディングで録音する「音」には、まず楽曲の音があります。

ボーカルや楽器といった、「アーティストが奏でる音」です。


コンサートのステージ上には、マイクロホンがいくつも設置されています。

このマイクロホンに入った音が、PAシステムのさまざまな機器を通り、最終的にメインスピーカーから出て、観客へと届くわけですが、ライブレコーディングでは、それらのマイクロホンの音や、エレキ楽器のD.I.のラインアウトなども録音します。


PAとレコーディングで、1本のマイクロホンを共用する場合も多いのですが、PAのプランニングとは異なったマイクロホンで、収録を行いたいケースもあり、楽器によっては、録音専用のマイクロホンを向けることがあります。


今回の場合、まず、ベースアンプを狙うマイクロホンがそうです。

左のC-38Bが、録音専用に設置されたマイクロホン。

ライブ会場内の観衆へは、お届けすることのない音声回線です。


次は、ドラムセット。

まず、キックを狙う2本のマイクロホンのうち、右のMD 421が録音専用です。

同じくドラムセットのスネアには、トップ、ボトム、シェルを狙う、計3本のマイクロホンが立っています。

このうち、サイドからスネアのシェル(胴)を狙っているAKG C 414が録音用です。

もちろんトップとボトムのマイクも録音するので、スネアだけでも3回線ですね。


さて、録音専用に立てるマイクロホンは、楽器に対する物だけではありません。

アーティストが奏でる音の他に、ライブレコーディングにおいて、とても重要な音があります。


それは「オーディエンス」。会場のお客様の歓声です。


コンサートというものが、アーティストと観客のエネルギーが混ざりあって、初めて完成するのと同じく、ライブレコーディングでも、オーディエンスの音を欠かすことは出来ません。

もしも、熱く盛り上がるオーディエンスの姿は映っているけど、その歓声はイマイチなライブDVDがあったら…それじゃ感動は伝わりませんよね。


オーディエンスマイクは、観衆の声援や、オーディエンスが放つ熱気、そしてライブ会場内に渦巻くエネルギーを収めるためのマイクロホンです。


この日、会場内にはオーディエンス収録用のマイクロホンが全部で10本仕込まれていました。順番にご紹介します。


まず1つめは、1階客席エリア前方の、出入り口付近に立てられたAKG C 451。

当然、マイクロホンはアーティストではなく客席の方を向いています。(LRで2本)


2つめは客席エリアの2階位置にある、

パイプオルガン・バルコニーに立てられたMKH 416。(LRで2本)


3つめはステージの床です。バウンダリーマイクロホンAMCRON PCC-160が、

ステージ上の前方、客席エリアとの境あたりに仕込まれています。(LRで2本)


4つめと5つめは、客席の頭上位置。

天井から専用装置を使って吊り下げています。

1階席の上あたりにMKH 416、2階席の上あたりにKM 184。(それぞれLRで計4本)

ホールの客席エリア上(天井付近)は、エアコンの風が吹くので、吊りマイクには風防がついています。(頑張って撮影しましたが見づらいですね…)


以上、オーディエンスマイクロホン 合計10本です。


オーディエンスの音が、ねらい通りにしっかり録れるかどうかは、非常に重要です。

でも、オーディエンスマイクは、ボーカルや楽器などのマイクロホンと異なり、収音対象とする音(歓声)で、チェックやリハーサルを行うことはできません。


それでは、どうやってオーディエンスマイクの音をチェックするのか???

レコーディングエンジニア 熊田さんに質問したところ、リハーサル中に会場で鳴っている音を、オーディエンスマイクで拾って、その音が、“想定した音”になっているかを聴いて、判断するのだそうです。

当然、この確認によって、マイクロホンのポジション変更を行うこともあります。

この予測と的確な判断は、豊富な経験に基づいたノウハウだなと、本当に驚きました。


ライブレコーディングは本番一発録り。

例えツアーであっても、同じライブは二度とありません。


オーディエンスは、アーティストの音楽を全身で感じ、興奮や熱狂を加速させます。

アーティストの音も、オーディエンスのエネルギーを受けて、どんどん変わります。

その、アーティストとオーディエンスの掛け合いのような最高の瞬間を、余すことなく収録するために、レコーディングエンジニアは様々なことに神経を尖らせ、複数の可能性を予測し、ライブという瞬間に臨むのだと、感じました。


ちょっと長くなりましたので、今日はこの辺で。続きはレポートその4でお届けします!




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