東京モーターショーのトヨタブースとヒビノの大型映像装置のお話です。
昨年10月24日(木)から11月4日(月)に「第46回東京モーターショー2019」が開催されました。とりわけ話題を呼んだトヨタのブース。大型映像と音響を担当したのはヒビノです。
私もトヨタブースでは雷に打たれるほどの衝撃を受けまして、ぜひともブログで紹介したいと担当者に話を聞きました。そして、この展示がいかに斬新で突き抜けていたかを再認識することになるのです。
革新的だった2019年を詳しく紹介する前に、30年前へタイムスリップし10年毎の「トヨタブース」と「ヒビノの大型映像」を見ていきます!
第28回東京モーターショー1989
マルチプロジェクションキューブ登場
ヒビノがトヨタのブースを初めて担当したのは、晴海から幕張メッセに会場を移して開催された第28回東京モーターショー1989でした。
東京モーターショーの歴史は、大型映像の歴史といっても過言ではありません。自動車メーカーと同様にこのショーに照準を合わせ、数々の新システムや新技術が登場してきました。
▲排気量とデザインで来場者を驚かせたトヨタ4500GT。隣の映像装置はマルチプロジェクションキューブ「RM-V111」。40インチ×12台を用い継ぎ目の目立たないフラットな大画面を構築。トヨタブースでは全48台のマルチが活躍した。
当時、イベント映像の主力を担っていた表示装置は、画面を縦横に自由に並べて大画面を構築する「マルチ」です。ブラウン管の『マルチビジョン』からリアプロジェクターを搭載する『マルチプロジェクションキューブ』への移行期まっただ中で、両タイプが各社ブースに混在した年でした。
ちなみに、マルチシステムの画質を大きく左右する拡大器という装置があったのですが、最高の映像を実現するため、ヒビノはメーカーと共同し、当時としては最高画質の高性能拡大器を開発します。
さて、1980年代後期に登場したマルチプロジェクションキューブは、約10年にわたりイベント映像の主流装置として大活躍していくのですが、10年後のトヨタブースには全く新しい映像装置が登場します。
第33回東京モーターショー1999
LEDディスプレイ・システム“元年”
1999年の東京モーターショーでは、LEDディスプレイが初めて採用されました。
トヨタブースは、円形状サロンの壁一面をLEDディスプレイで覆い、色鮮やかな映像を表示しました。また、映像装置のみならず音響の設計・施工・運用もヒビノが担当しています。サロン中央の床にフロアシェーカー(音を振動で体に伝える装置)を仕込むなどし、「360度の迫力映像」と「全身で感じるサウンド」で来場者を楽しませました。
ヒビノが『音と映像のプレゼンテーター』としての総合力を発揮した現場でしたね。
さて、好景気が続きモーターショーの演出は年々華やかさを増していくのですが、10年後の「第41回東京モーターショー2009」は、リーマン・ショックによる大不況のあおりを受け、海外メーカーの出展辞退が相次ぐような規模縮小の異例回でした。当社も限られた予算の中でいかに効果的な映像を提供できるかに燃えた年だったと記憶しています。
さらに10年。いよいよ2019(令和元)年です。
第46回東京モーターショー2019
大型映像の価値が新たになった革命回!
▲壁から床まで総面積365.75㎡の高精細LEDディスプレイを用い未来の街を出現させた。
※Photo by Masato Kawano (Nacasa & Partners Inc.)
大型映像装置の主流は、変わらずLEDディスプレイですが、注目すべきはトヨタの展示がいかに斬新だったかということです。
ブースには、従来あるべきものがありませんでした。
車(量産車)が一台もなかったのです。
話題沸騰 間違いなしの新型車や新モデル車は、ショーより前に発表されました。これまでの常識で考えれば、これぞショーの華です。では、新車に代わる目玉とは何なのか?
トヨタの出展は、未来を体感できる「モビリティのテーマパーク」でした。
同年の東京モーターショーは「OPEN FUTURE」をテーマに据え、クルマだけでなく「くらしの未来」にまで領域を拡張しました。これを率先して体現し、斬新なブースを展開したのがトヨタだった、といえるのではないでしょうか。
次世代モビリティが走る「未来の街」を来場者に体験してもらうため、ブースに必須とされた要素は「人」「モビリティ」「映像」だったはずです。
元来、自動車の見本市における映像装置の役割は、主役の車を魅せることでした。デザイン、走り、安全性といった価値を伝え、魅力を際立たせる演出装置です。
私はトヨタブースに足を踏み入れたとき、モーターショーにおける大型映像の歴史が動いたと思いました。「これは革命回だ」。未来の街で一人、雷に打たれた気分でしたね。自動車メーカーが、車に匹敵する役割を大型映像に持たせたのかもしれないと思い至ったからです。いま振り返っても、全身の神経がぶわっとなるほど興奮します。
もしかしたら、当社の人間は「大げさだ」というかもしれません。小心者の私はいつもなら受け入れるところですが、今回ばかりは「違う!これは大ごとなのだ!」と叫びたい。映像装置の価値が革新したのですから。この興奮は収まりません。
次回、2019年のトヨタブースの映像システムについて詳しく紹介します。どうぞお楽しみに!
本実績の担当は
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