【バーチャルプロダクション】朝焼けに光る美しい髪。LUX新CM「私をすすめるのは、私。」篇で使われた撮影技術

おはようございます。ヒビノ広報のhiroです。

国内の映像制作で、LEDディスプレイを背景に撮影を行うバーチャルプロダクションの活用が広がっています。CMやミュージックビデオのほか、テレビ番組での導入例も増えてきたので、「実は見ていた」という方が大勢いらっしゃると思います。今回は、当社のHibino VFX StudioチームがLEDディスプレイ・システムをサポートしたテレビCMのバーチャルプロダクション撮影を紹介します。



スタジオでロケ撮影「バーチャルプロダクション」

バーチャルプロダクションは、実際にその場所に行って撮影したかのような「自然な合成映像」を撮ることができる技術です。背景を映したLEDディスプレイの前に被写体を置き、一緒に撮影することでリアルタイムに合成映像をつくりだします。


従来の撮影と大きく違う点は、ロケーション撮影では考慮しなくてはならない場所、季節、時間、天候などの制限を受けず「決めた日に確実に撮れる」こと。また、クロマキー合成(グリーンバック)では得られない「自然な表現が撮れる」ことが挙げられます。


今回、撮影されたのは、ユニリーバが展開するトータルビューティーケアブランド「LUX(ラックス)」のテレビCM「私をすすめるのは、私。」篇です。


▼ラックス スーパーリッチシャイン 私をすすめるのは、私。篇(出演:水原希子さん)

https://youtu.be/S2Go1DXxDXc

ヒビノはバーチャルプロダクション制作を手掛けたビジュアルマントウキョ―からお話をいただき、撮影に参加しました。ビジュアルマントウキョーはかなり早い段階からLEDバーチャルプロダクションに着目し、当社Hibino VFX Studioでもテスト撮影を繰り返されていました。現在は様々な作品づくりに当社のシステムと技術を起用いただいています。

デジタル技術を駆使した制作を得意とするビジュアルマントウキョ―。今回、髪を最も美しく撮影する必要があったからこそLEDバーチャルプロダクションを採用したと話されています。



2.84mmピッチLEDディスプレイをラウンド設置

撮影の背景となるLEDディスプレイ・システムは、ROE Visualの2.84ミリピッチ「BlackOnyX2」です。当社スタジオではなく、外部の撮影スタジオに設置しました。大きさは高さ4メートル、幅14メートル、84度にラウンドさせた画面です(横28枚のLEDパネルをパネル間に3度の角度をつけて設置し湾曲画面を形成)。

バーチャルプロダクション撮影の場合、超高精細1.56ミリピッチ「Ruby 1.5F」を用いることが多いのですが、今回は「明るさ」を稼ぎたいという目的もあって1.8倍の最大輝度をもつBlackOnyX2を起用しました。

送出機材は、メディアサーバーdisguise「vx4」。背景となる映像をLEDディスプレイにどのように表示するかをコントロールする機材です。大きさを変えたり、疑似的なぼかしを加え世界観になじませたりする作業はvx4で行いました。vx4が出力した映像をLEDディスプレイに映し出すのが、Bromptonの4K LEDプロセッサー「Tessera SX40」2台です。色、色域、色温度の調整や1モジュールごとの色味や色むら補正など精細な調整が可能で常にベストな表示を提供します。


今回、髪の動きをスローで豊かに表現するためハイスピードカメラで撮影されました。



見どころは「美しい髪」の「自然」な表現

バーチャルプロダクションの最大の特徴は「自然な映像」です。高精細LEDディスプレイで出現させた世界と、太陽光を表す照明機材などによって「そこにある風景」が再現されました。


髪、肌、瞳に反射する朝焼けの世界。

一本一本のなびく髪から抜ける景色。

ボケ感の美しい表現。


世界が被写体に与える効果(映り込み、反射、透過など)をつくり、本当に現地で撮影したかのような「リアルな質感」を映像にもたらします。これこそがバーチャルプロダクションの真骨頂であり、クロマキー合成との最大の違いです。


ちなみにクロマキー合成は、髪の毛の一本一本など細かい部分はマスクが切りづらく苦手とされるほか、グリーンバックの緑色が被写体に反射する可能性もあります。また、グリーンバックに均一な明かりを当ててフラットな緑色に保つ必要があるため、朝日のような強い照明との相性もよくありません。照明演出の自由度が高い点もLEDバーチャルプロダクションの強みです。



『時空の制限』を越えた撮影が可能

このCMの本番撮影は、たった一日でした。同一施設内にある複数のスタジオに、いくつもセットが組まれました。屋外シーンを撮るバーチャルプロダクションのセット、シャワーのセット、グラビア撮影風のセットなどが建てられた部屋を次々と移動しながら全シーンを一日で撮り終えています。


バーチャルプロダクションでは、朝焼け、夜景など背景を切り替えながら、複数のシーンが短時間で撮影されました。


本来、朝焼けのビル群や夕日に染まる空などの美しい「マジックアワー」は、持続しても30分程度。ロケ撮影では、気象条件がそろうまで何日も待つ場合がありますが、時空の制限を超越したバーチャルプロダクション撮影であれば、決めた日に確実に撮れること、他のセットと一緒にまとめて撮影できることも今回のメリットでした。



アウトプットを確認しながら現場で高める「理想の画づくり」

テストでは、朝焼けのシーン、昼のシーン、夜のシーンなどいくもの情景が試され、カメラを通した映像を確認しながら、その場で調整が進められました。


色調整は、LEDモジュールごとの精密な色調整を可能とするLEDプロセッサーTessera SX40で画面の色を調整しベースを固めた後、カラーグレーディングソフト「DaVinci Resolve(ダビンチリゾルブ)」でカラーコレクションを行う流れでした。合わない部分は、再度LEDプロセッサーで調整するなどし、どちら側でどういう風にやるかを密に話し合いながら、監督やチーフカメラマンと共に仕上げていきます。


素材の調整もメディアサーバー「vx4」で行っています。今回の背景は3DCGではなく、高解像度の映像から切り出した2D写真でした。画像として出来上がっているので、従来なら素材上で事前に加工しておくところですが、メディアサーバー上で色調整やブラーなどの加工も簡単にできるので、当社スタッフがサポートしながらチーフカメラマンが直接操作し「求めるロケーション」や「求める色」を探っていきました。例えば「あの目立つビルを、ここにもってこよう」「大きさをかえよう」「この建物はそっちにも欲しい」といった具合で変更を加えたり、遠くのビル群にぼかしを加え実際にロケ撮影した場合の被写界深度に近づけたりしています。単純にぼかすとビルの輪郭までなくなってしまうので、加工素材と元素材を合成して輪郭感をだしながらボケ感を調整しました。


全員でアウトプットを共有しながら、様々なシーンを試し、その場で感覚的に『画づくり』を高めていけることも、LEDバーチャルプロダクションのメリットと言えそうです。


水原希子さんのインタビューでは、撮影風景もご覧いただけます。


▼LUX BRAVE HAIR 水原希子さんインタビュー

https://youtu.be/7Vgmo-n25o8


世界で活用が進むバーチャルプロダクション。ヒビノは、デジタル技術を駆使した国内映像作品の創出をサポートしていきます。次はHibino VFX Studioで撮影された作品を紹介したいと思います。どうぞお楽しみに。


【お客様】

株式会社ビジュアルマントウキョー

http://visualman.tokyo/


【主な使用機材】

  • LEDディスプレイ:ROE Visual「BlackOnyX2(BO2)」(高さ4m×幅14m、84度湾曲設置)
  • 4K LEDプロセッサー:Brompton「Tessera SX40」
  • メディアサーバー:disguise「vx4」


【撮影期間】

3日(設営1日、テスト1日、撮影1日)


【本実績の担当部署】

ヒビノ株式会社 ヒビノビジュアル Div.

Hibino VFX Studio

https://hibino-vfxstudio.com/


音と映像のプレゼンテーター

ヒビノ株式会社

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