世界を楽しませる街頭ビジョン。高精細ラウンドLEDで実現した「3D巨大猫」がSNSシェア心理をつかむ 【クロス新宿ビジョン】

2021年、街ゆく人だけでなく世界を楽しませる大型街頭ビジョンが登場しました。新宿の3D巨大猫こと「クロス新宿ビジョン」です。7月に放映が開始されるやいなや、SNSを通じて瞬く間に世界へ広まり、新宿を代表する新たなランドマークとなっています。


放映面の一部が湾曲する独特の形状を活かして3D広告表示を提供するクロス新宿ビジョン。LEDディスプレイ及び音響システムを納入したのはヒビノです。


日本一の街頭ビジョンを目指し、選ばれたシステム。そのスペックの先には、高品質表示の鍵をにぎる施工技術や、SNS拡散のために行った前例のないシステム調整など、ハードを知り尽くすヒビノがみせた「挑戦」と「品質へのこだわり」がありました。


ヒビノの広報hiroがお届けします。


https://youtu.be/fNYvD1oB198



「日本一の街頭ビジョンにしたい」大型街頭ビジョンでは最高峰の高精細LEDディスプレイを採用

クロス新宿ビジョンは、今年完成した「クロス新宿ビル」の屋上(4階相当)に設置されています。新宿駅最大の広場「新宿駅東口駅前広場」の前という超一等立地ですが、敷地が狭小地で高層建物の建築が難しかったことから、低層建物+大型街頭ビジョンとして計画されました。建物はイベントスペース(クロス新宿スペース)です。大型ビジョンによる認知強化は、計画時から重要な検討テーマだったといいます。

画面は、大型街頭ビジョンとしては非常に高精細な6mmピッチLEDディスプレイ・システム「ChromaVision 60」(ヒビノ製)を納入。150㎡超級としては国内で唯一4K相当画質を実現する、国内最高画質の大型街頭ビジョン。

今回、採用されたLEDディスプレイ・システムは、画素ピッチ(LED素子とLED素子の間隔)が6mmの製品です。画素ピッチが小さいほどLEDの間隔は狭まり、高密度な映像表示になります。LEDディスプレイは「人から画面までの距離」と「用途」に合わせて適切な画素ピッチを選定しますが、今回採用された6mmピッチは、大型街頭ビジョンとしては最高級の高精細・高画質といえました。

地上の視聴者から屋上(4階相当)までは、どんなに近くても十数メートルは離れています。10mm以上の画素ピッチでも十分に視認できるため、16mmピッチや10mmピッチの製品もご案内しましたが、「日本一のビジョンをつけたい」というお客様の要望をうけ、ヒビノとしても大型街頭ビジョンでは初めての高精細6mmピッチの設置が決まりました。

最高峰の大型街頭ビジョンには、「画質」はもちろん「音質」も必要です。LEDディスプレイだけでなく、音響、映像、照明、制御、ネットワークまで包括的なシステムの設計・施工を得意とするヒビノグループ。お客様のニーズに最適な解決策を提案するトータル・ソリューション機能を活かし、スピーカー・システムの設計・施工も担当しました。

猫の頭上あたりに見えるのが設備用スピーカー「AW295」(JBL PROFESSIONAL)。雨や日光を直接浴びるような過酷な環境に持ってこいの耐候性と音響性能を兼ね備え、明瞭度の高いサウンドを対象エリア全体に均一に届けます。


抜群の立地とビジョン形状で生まれた3D表示

クロス新宿ビジョンの形状は、敷地の形や立地を理由に、早い段階から2面にわたるL字型の計画で進んでいました。そんな折、3D動画をみせる海外の街頭ビジョンが話題となり「クロス新宿ビジョンで3D動画はできるか?」という相談が持ち掛けられます。LEDディスプレイの設計は、持ってこいの形状でした。「できるはずです」そう答えた理由は、画面の形状だけではなかったとヒビノの営業担当は話します。

湾曲やL字のモニターでつくる3D映像は、画面が2面あることを上手く使い、ないはずの奥行きを感じさせ、飛び出すように見せる、いわば「トリックアート映像作品」です。3Dを楽しむには、特定の方向から見る必要があります。クロス新宿ビジョンは前方に新宿駅東口駅前広場が広がるほか、新宿駅東口スクランブル交差点にも面しており、広場で待ち合わせる人や信号待ちをする人など、多くの滞留者が同じ方角から長時間ながめやすい条件が揃っていたのです。目の前の歩道からも見上げられる4階位置という低層の設置も好条件に働きました。

少し先のお話ですが、東京都と新宿区が行う新宿駅周辺の一体的な再開発計画「新宿グランドターミナル構想」には、東口駅前広場の人中心への再構成が含まれていますから、将来的に滞留人口のさらなる増加も期待できます。

3D広告動画を提供するには、これ以上ないバツグンのシステム設計と環境で「3D巨大猫」が誕生します。


「高度な施工技術」×「プロ魂」が生み出す、ラウンド型LEDディスプレイの美しい映像表示

独特な形の放映面をもつクロス新宿ビジョン。湾曲やL字と表現してきましたが「Uを縦に二分した右半分」が現実に近いかもしれません。ビジョンの総幅は18.96m。うち左の5.52mが約90度にカーブする湾曲面で、残りの13.44mは平面になっています。

LEDディスプレイは基本的に平面です。箱型のLEDモジュールをつなぎ合わせて大画面を形成します。リング型やオーバル型など湾曲をつくる場合でも、LEDモジュールを曲げることはできないため、わずかに角度をつけながら、小さな平面(LEDモジュール)を並べた「多角」で「湾曲」をつくりだします。

湾曲面の施工には、高い技術が求められます。新宿クロスビジョンの湾曲面は、幅230mmの平面を横に23面、角度をつけながら配置することで約90度のラウンドを形成しました。LEDモジュールの目地を精密に合わせ、画素ピッチを均一に保ちながら角度をつける設置をするわけですが、美しい映像表示を実現するためには1mmのずれも許されません。正確には、今回の許容誤差は0.5mm以下。これを超えたずれは隙間となり、画面に黒い縦線となって現れます。技術がなければ簡単に起こる事象です。ビル屋上で行った繊細なラウンド施工は、プロの目から見ても非の打ちどころのない仕上がりとなりました。

施工を行った技術担当の小川(ヒビノ)は、「LEDディスプレイの取り付けは、何回も何回も、何日もかけて、納得できるまでチェックを繰り返しました」と話します。徹底的に精度にこだわるわけは、完成後のやり直しが効かないことを肝に銘じているから。特に今回のような高所の現場をやり直すには巨額の費用がかかり、実質やり直せないことを意味しています。

高品質・高精彩なLEDディスプレイ・システムを開発するヒビノですが、ハードのスペックの先にある「施工」や「調整」技術こそ、腕の見せどころでした。


「スマホで綺麗に撮れるビジョンにしたい」カメラ写りの改良をLEDディスプレイ側で調整

日本はもちろん海外でも話題となった新宿の3D巨大猫。火付け役は「SNS」でした。クロス新宿ビジョンは、TwitterやYouTubeチャンネルを運営することで放映する動画の認知をより拡大し、広告主にメリットを提供するSNSを組み合わせた屋外ビジョンです。「街頭ビジョン×SNS」が大成功し、人々の「シェアしたくなる心理」をつかみました。ユーザーによるビジョンの撮影&SNS投稿が増えたときに、映像の弱点ともいえる問題が浮かび上がります。

LEDビジョンをカメラで撮ると、ビジョンにしま模様が入るなど「目で見た光景とは違うもの」に写ることがあります。今回、問題となったのは黒い斜線が入るフリッカーと呼ばれる現象でした。LEDは常に光っているように見えますが、実は人間の目では分からない高速で点滅を繰り返しています。それより早いシャッタースピードで撮影すると、ちょうど消灯しているLEDが黒く(画面の消灯時の色に)写ってしまうのです。映像の仕組みに起因するものなので、カメラのシャッタースピードを遅くすることでフリッカーを防ぐことができますが、目の前のビジョンで突然おもしろいCMが始まったら、急いでスマホを取り出して撮り始めるのが普通です。「せっかく新宿に巨大猫を見にきたけど、うまく撮れない」そんな声も上がりました。

実際には、高いスペックと施工技術で実現した「高画質な画面」で4K相当の映像を届ける美しいビジョンですが、写真にキレイに写らないことから、ビジョンの品質まで勘違いされて広まる懸念もでてきました。話題性の高さゆえ浮かび上がったこの問題に「最大限、力になりたい」と、お客様と一丸となって取り組みました。


課題に技術で応えるのがヒビノ。カメラ写りをLEDディスプレイ側で改善させる前例のない調整が始まります。技術チームを中心に慎重な検証のもと、システムの調整とカメラテストを繰り返しました。最終的にはリフレッシュレートを変更してLEDの点滅速度を上げ、フリッカーの発生を抑えることに成功。常設ビジョンに行う調整としてはヒビノでも初の試みでした。点灯回数を増やすことになるため、LEDの寿命への影響なども細かく検証し、バランスをとりながら、もともと想定していた耐用年数の10年にも問題なく、スマホのカメラで綺麗に撮れる「SNS拡散を前提とした映像品質をもつ高画質な大型街頭ビジョン」が完成。お客様に一層ご満足いただける仕上がりとなりました。




更新される「難しい」を超え続けるヒビノの仕事

QFRONTや渋谷駅前ビジョンなど、大型ビルボードのLEDディスプレイ・システムを多く手掛けていることや、音響システムまで一体で提案できる総合力を理由にお声がけいただき、ご提案がスタートした今回。ヒビノが選ばれる理由には、「困難なことがやれる」現場を収める力があったと感じます。

営業担当の下公(しもこう)は、「今回、設置後にお客様が思っていたものと違う課題がでてきました。稼働させて分かる視点があるので、そこまで解決してようやく自分にとって「収めた」と胸を張ることができる。お客様がやりたいという要望を最後まで、時には納入後もフォローすることも大事にしています」と話します。

クオリティに妥協を許さない精神と、豊富な実績に裏打ちされた確かな技術でつくりだすヒビノの仕事が、「ヒビノなら難しい依頼でも最終的になんとか形にしてくれる」という信頼を築いてきました。

「これは本当にきついな、と思う現場はあるんですけど、さらにきつい現場が出てきて、過去の現場はあまり大変じゃなかったことになっていく」と笑顔を見せた技術の小川。クロス新宿ビジョンには、常に更新される「難しい」を超え続けるヒビノの仕事がありました。


■「クロス新宿ビジョン」納入概要

製品納品先:株式会社クロススペース

顧客:凸版印刷株式会社

設置場所:東京都新宿区新宿3-23-18 クロス新宿ビル屋上


<ビジョン>
  • 製品名:ヒビノ製LEDディスプレイ・システム「ChromaVision 60
  • 画素ピッチ:6mm
  • LEDタイプ:3 in 1 SMD
  • サイズ:W18.96m×H8.16m(154.7㎡)/812.6インチ
  • 最大輝度:6,000cd/㎡

<音響>

納入事業部

LEDディスプレイ・システムの開発・製造・販売を行うヒビノクロマテック Div.
https://chromatek.hibino.co.jp/

音と映像のプレゼンテーター
ヒビノ株式会社